デパートは公衆の利益を本位とせねばならない自己本位、個人的利益を目的とするときには、自然の力によって、打倒さるべき運命となるであろう


 当時日比は「米国に行なはるるデパートメントストアの一部を実現致すべく候事」という広告を出した。これが「三越デパートメントストア宣言」と言われるものである。
 その頃の小売業は非近代的な商店経営のままで、公益よりも私的利益第一の経営であった。そんな中、日比は「デパートはあくまでも公衆の利益を本位とせねばならない」の経営姿勢のもとアメリカ式のデパートを日本に導入した。
 日比は経営革新を図るためデパートの業態を切り換えようと、次の三大方針を打ち出した。

①物の佳良となること。
②広告の正直になること。
③顧客に満足を与えること。

 今では常識とされている内容だが、当時としては、「デパートメントストアの成功の三大秘訣」として話題を呼び、三越に続けとデパート創業の動きが盛り上がったという。
 日比は、「三越は教育の場」と考える。そして三越は第一に「近代的商人の教育、育成の場であらねばならない」、第二に「社会改善の考えを商売を通して広く世間の人びとに理解してもらう場であろう」、第三に「国民外交の実際を知る場でもあらねばならない」とし、店員教育に特に力を入れた。


【プロフィール】
日比 翁助(ひび・おうすけ)1860年生まれ。
わが国に初めてデパートを導入した人物で、デパート業界の名門「三越」の中興の祖として歴史に名を残している。