いっさいの秩序を実力本位、人格主義におき、他人の技能を最大限に発揮せしむ


 筆者は大学時代「企業診断研究会」で、当時「ソニーは人を活かす」の著者である小林茂取締役をお招きし講演を開き感動した。
 何年か後、筆者は「職場活性化」の研修でソニーの各工場を講演して巡ったが、そこには井深氏の描いた〝創業の心〟が薄れてきてしまっており、残念に思ったものだ。
 筆者は井深氏のつくった会社創立の目的が大好きである。それを以下に紹介する。

会社創立の目的は、
第一に「技術者たちが技術することに喜びを感じ、その社会的使命を自覚して、思い切り働ける職場をこしらえるため」
第二に「日本再建、文化向上に対する技術面生産面よりの活発な活動」
第三に「非常に進歩したる技術の国民生活内への即時応用」

 
経営方針には「不当なるもうけ主義を排し、あくまで内容の充実、実質的な活動に重点をおき、いたずらに規模の拡大を追わず」「技術上の困難はむしろ歓迎し、量の多少に関せず、最も社会的に利用頻度の高い高級技術製品を対象にする」と述べている。
 さらに「一切の秩序を実力本位、人格主義におき、個人の技能を最大限に発揮せしむ」と書かれている。この理念がこれからの時代も受け継がれ、ソニーの人々の心のよりどころとなっていくことを願いたい。


【プロフィール】
井深 大(いぶか・まさる)1908年生まれ。
軍隊の時知り合った盛田昭夫と力を合わせ、トランジスタラジオをはじめ、世界最小の匠の製品を次々に世に出し、ソニーの基盤をつくった技術屋。