商い繁盛の秘訣の第一はなんといっても仕入れにある
そして第二は誠意をもってお客に接することだ
とかく商売というと利益を得ることを第一に考えがちだが伊藤はまず“困っている人たちに喜んでもらえることが、商売になる“と考えた。
あの時代に「薄利多売、元金掛値なし」という看板をかかげ、現代のディスカウントショップの経営者達が考えているような商売のコツを内外に発信した。
まわりの商人たちの商習慣を無視して独自の路線に突進する伊藤に非難や、やっかみの声も多くあったが、当の本人はそんなこといっこうに気にかけず、率先して商売に精を出した。
特に伊藤は仕入れに力を入れ、店員に任せっぱなしにすることもなく、自分自身も京都にも出かけ、商品を自分の目で確認してから仕入れをしたという。だから「伊藤の店はいい物がある」と絶対の信頼を得るところとなった。
このような努力を重ねた結果、伊藤は「商いの秘訣は、なにに置いてもまずお客さまに喜んでもらうことにある」ことを悟った。
「商売は第一に仕入れに力を入れ、第二は誠心誠意お客さまに接すること」という伊藤の考え方は伊藤家の商いの精神として、代々松坂屋に引き継がれ、今日もなお脈々と息づいている。
【プロフィール】
伊藤 次郎左衛門(いとう・じろうざえもん)1609年生まれ。
「元金掛値なし」の正礼販売を貫き、客の喜びを与えることに心をくだき、松坂屋の基盤を作った始祖。