「おもてなしの心」
「人情の美」が
人気を左右する
岩切は、地方の観光を成功させるには「おもてなしの心」「人情の美」が左右すると考えていた。だから彼は先ず、日本一と称美された〝バスガイドの養成〟に力を入れた。
修学旅行の団体が来る時、その学校の校歌の演奏で迎えたという気配りには感動する。
彼は客からの「評判ほどではない!」という言葉を危険信号として、常に自戒していた。
彼は「最もいい観光地では、〝自然の美〟〝人工の美〟〝人情の美〟が一つに溶け込む」と言い、自然より美しく磨きあげる大地に描いた夢で客をもてなす、とした。こうした岩切の創意工夫の精神は時を越え、今でも輝きを放っている。
岩切は仏の心を経営に生かした人でもある。仏典や僧の言葉を糧に幾度もの危機を乗り越えた企業家である。
岩切は「心配するな工夫せよ」という僧の教えが役立ったと語っている。最悪の事態に腹を据えて何が起きても心配せず、ただ一生懸命工夫する生き方を貫いた。宮崎のサービスは行動指針の「お客様の心の声に耳を傾け、笑顔で最高のおもてなしを約束します」にすべてが含まれている。
【プロフィール】
岩切章太郎(いわきり・しょうたろう)1893年生まれ。
宮崎を起こした「観光の父」と呼ばれる。一九六〇~七〇年代、二百万人の新婚カップルの四分の一の五十七万人を宮崎に呼び込んだ。一大観光地をつくりあげた人物。