人間は踊る舞台を
与えれば踊る
「店を発展させるためには問題点は資本より人間性を仕込むことだ」
「人間は踊る舞台を与えれば踊る」というのが岩田の社員育成の基本姿勢であった。
「あの人間をこの舞台に上げたらこのように踊ってくれるだろうと私が予想すると、八割方当たる。一割は期待はずれ、これは当然舞台から下ろします。あとの一割は想像以上の大活躍、これはもちろん抜擢です」と岩田は語る。
「人様と深く接しないし、また向こうさんからも期待しません。社員にも同様です。仕事の関係だけでいいのです。残業なんか長くするのは感心しない。深入りの付き合いをしたらろくなことがありません」
だから「浅く関わる」ことこそ自分の成功の秘訣だというのである。岩田は社員の〝舞台上の姿〟だけを見て、楽屋はのぞかない主義だった。
岩田はその人間にとって最も踊りやすい「舞台」を常に考えていたのである。
自分の持ち前と人柄を最大に活かせる舞台で、常に新しい舞を踊っている人々をわれわれも多く作りたいものである。
まさにこのことは筆者の著書『いのち輝かせて生きる』(致知出版社)で述べている内容そのものである。
【プロフィール】
岩田 孝八(いわた・こうはち)1922年生まれ。
生家は神奈川県茅ケ崎の布団屋「長崎屋」であった。復員して廃墟と化した平塚の町を見て商人根性に火がつき、今日の長崎屋を創立。