どういう商品をつくり出せば多くの人に喜んでもらえるか
儲かる商品を考える前に、社会への
貢献を考えよ
そして新しいマーケットを創造できるような商品を開発することである
昭和二十一年、日本が敗戦のどん底にあえぐ中、樫尾忠雄は東京・三鷹市で創業する。精密機械の下請けをしていたが、不運にもやってきた不況風に打ちのめされてしまう。そんな時、樫尾の姿を見かねた三人の弟が「自分たちも手伝いたい」と申し出て、兄弟で力を合わせて開発に心をそそいでいく。
「これからの時代は、大企業に負けない全く新しいトップ商品を開発しなければ生きてゆけない。それなら、いっそのこと思いきって〝奇想天外な商品〟をつくろう」と兄弟で誓い合う。
「まだ日本でだれもつくっていない、人から喜ばれ、かつ将来性のあるまったく新しい計算機の開発に挑戦しよう」と志を立て前進したものの、いざ研究開発を始めてみると、予想をはるかに超えた難事業であった。
十分な資金も、開発設備もなく試行錯誤の年月が続いた。そしてついに第一号の商品開発にこぎつけている。それはあの有名な画期的なリレー式計算機であった。
兄弟で力を合わせ、苦難の山々を超えてきたカシオは今では計算機のみならず、さまざまな電子辞典などを開発進化させ、世界の人々の生活文化に貢献する輝く企業に成長している。
【プロフィール】
樫尾 忠雄(かしお・ただお)1917年生まれ。
他社に先駆けて開発した電卓、デジタルウォッチ、ポケットテレビ等々、大ヒットになる商品を次々に開発して今日のカシオの開発風土をつくりあげた。