企業家精神にあふれる社員がいっぱいいる会社は伸びる
企業家精神とは何か
ひらたくいえば、自分の勤めている会社を〝自分の会社〟と思えることだ


 小泉は三十六歳の時、アメリカでNCRの国際セミナー・MMMを受講し、帰国した時は「商店主」からすっかり「経営者」に変わっていた。
 アメリカの実情を細部にわたり研究してそれをヒントに本格定な中国料理店「東天紅」を創業した。
 小泉は、「異業種複合経営」というものを考え出し、三十数社の企業グループを結成し、「宇宙衛星型経営」という小泉グループ流の経営スタイルをスタートさせた。
 それは小泉の社長室が基地となって、衛星ともいえる各社に常に助言を送り、独立採算制を確立させようというシステムである。
 小泉はこのような卓越した手腕で、各社を軌道にのせ、「流通業界に小泉あり」と言われるまでとなる。そんなある日、小泉は企業再建の名人に出会い「企業がつぶれる条件は何か」と問う。
 すると、その名人は「企業倒産の原因は、放漫経営とか過大設備投資などいろいろあるが、それは表面的なものであって、それ以上に、社員が〝この会社は私の会社だ〟という意識のないものはつぶれている」と答えた。
 小泉はそれ以来、社員の前にこの言葉を示し続けたという。


【プロフィール】
小泉 一兵衛(こいずみ・いちべえ)1920年生まれ。
アブアブ赤札堂、東天紅など小泉グループの創始者。米国のマネジメントやマーケティングを学び、自社のみならず流通業界にそれを持ち込んだ。