真理にかなったやるべきことを
やってだめなものは仕方ない
考え違いをしているとか欲張っているとか、どこかに真理にはずれていることがあれば抹殺されます


 筆者は山城経営研究所の常務理事の時、「KAE経営道フォーラム」という上場企業の役員候補の研修を行っていた。
この時の受講生五十名を連れて丸田氏の話をうかがいに花王に伺った。丸田社長は聖徳太子の考え方をベースにして経営されている方でその思想を常に発信していた。一流と言われる経営者は決まって自分軸がしっかりとされており、信仰するような思想が確立されている。前述した「真理にかなったことをやってだめなら仕方ない」もそうした思想から出てきているものだ。
「私はよく言うんですけれど、同業他社とシェア争いなどということを絶対考えることはないんだと。販売も今月はなんぼ売上げろとかなんぼ達成したかなんて一言も言ったことはない。
問題はそんなことよりも、いい商品をつくる努力をする。販売として大切なのはそういった魂のこもった商品が店に並ぶか並ばないか、目につくところにあるかどうかなんです。
せっかくいい商品だとおすすめしているものが、欠品だったりすることは非常にお客様に対して不誠実なことをしている。そういうことをしちゃいけない」と語る丸田社長の存在感あるカリスマの姿が今でも目に浮かぶ。


【プロフィール】
丸田 芳郎(まるた・よしお)1914年生まれ。
花王に入社して以来、技術者として製品開発に深くかかわり二十年近く社長を務め、花王の中興の祖と言われている。聖徳太子の思想を持って経営した人物。