消費者がどんな製品を望んでいるか調査して、それに合わせて製品を作るのでなく、新しい製品を作ることによって彼らをリードすることにある


 「わが社のポリシーは消費者がどんな製品を望んでいるか調査して、それに合わせて製品を作るのではなく、新しい製品を作ることによって彼らをリードすることにあり、だから我々の市場調査などにあまり労力を費やさず、新しい製品とその用途について、あらゆる可能性を検討し、消費者とのコミュニケーションを通じて、そのことを教え、市場を開拓していく」と述べている。
 「我々のビジネスに対する基本的態度は、何か新しいテクノロジーを開発したら、とにかくすぐに、それで何か作りたいと考えるところにある。発明や発見は、ただ関心したり、それを学問上の成果とだけ考えて終わってしまったら、それは誰にも利益をもたらさない」。盛田は研究開発だけで会社が繁盛することはありえない。大切なことは、発明したものをビジネスに結びつけることなのであると繰り返し述べている。
 盛田は、創業時の理念をより洗練させ、次のような「ソニースピリット」をつくりあげた。筆者はソニースピリットが好きである。いつまでもソニーはこうあって欲しい。

ソニーは開拓者、その窓はいつも道の世界に向かって開かれている。人のやらないこと、困難であるがために人が避けて通る仕事にソニーは勇敢に取り組み、それを企業化していく。ここでは新しい製品の開発と、この生産販売のすべてにわたって、創造的な活動が要求され、期待され、約束されている。そして開拓者ソニーは、限りなく人に生かし、人を信じ、その能力を絶えず開拓して、前進していくことをただ一つの生命としているのである。


【プロフィール】
盛田 昭夫(もりた・あきお)1921年生まれ。
戦後の日本繁盛を象徴するソニーの独創的な商品開発と海外展開をリードし、「国際派ナンバーワン経営者」と言われた。井深大の創業時からのベストパートナー。