勝負に勝つためには
戦況について情報収集することだ
情報は偏らず各方面から集めよ
小佐野は語る。「事業が、勝負の要素をもつものであるなら、勝負強さも経営者のたいせつな資格の一つである。勝負に勝つためにはまず、戦況についてあらゆる情報を収集することである。幅広く、深く、各方面から情報を集めることである」
さらに小佐野語録を続けよう。
「私は日頃のいろいろな人とのお付き合いのなかに、情報網を縦横に張りめぐらせている。こうして集められた情報をもとにして決断を下すのである」
「決断する時は勘で行う。勘は経験と計算に支えられており、コンピュータにできない決定を下す力がある。そこで〝進め〟と結論が出たら、全力でこれに当たり、〝止まれ〟と結論が出たら未練を残さず、きっぱりと手出しをしないことである」
戦時中、当時の最高権力「軍」に食い込み、御用商人として荒稼ぎした二十代の小佐野の〝実力〟を物語る秘話である。
今日の貨幣価値にして数十億円の大金を掴んだとされている。
「私が金を持っていなかったら、だれが私を相手にしてくれるか。『小佐野さん』・『小佐野さん』と人が集まってくれるのも、私が金を、力を持っているからだ。ただそのためだけではないか……」。少し悲しい話だが確かにそうかもしれない。
【プロフィール】
小佐野 賢治(おさの・けんじ)1917年生まれ。
山梨県の山の中の貧しい家から上京し、自動車部品の店員からスタートし、戦時中は金脈を探してかけめぐり「ロッキード事件」にまで発展する人生を過ごす。