義を先にして
利を後にするものは栄え
利を先にして
義を後にするものは
辱められる
昔から商売をやる者が悩み惑わされるのは、「義」と「利」の心の中での争いである。利益を追わねばならぬことは当然であるが、どこまで義を押し通すか。またお客への利のためにどこまで対応していくことができるかにある。
「お客のためにならぬものは絶対に売ってはならない。世間では目先の事ばかり考えて商いをするものがいるが、そういうやり方はわしは嫌いだ。いかに急ぎの用でもそのために高値をつけてはいけない。また、大金持ちの御用でも、子供のお客でも、お客によって上下をつけることなどしてはいけない」と下村は店員を戒めた。
下村は『義を先にして利を後にするものは栄え、利を先にして義を後にするものは辱められる』(眼前の小利にとらわれるなという戒め)という言葉を商いの根本精神としていた。
そして「 「先義後利」を大丸の店是に定め、全店に配布した。この「先義後利」の心は、今でも大丸の商訓になっている。
「お客の役に立たないものは売ってはいけないし、いかに人気の高い商品でも高い値段をつけてはいけない」と、下村は常日頃から口がすっぱくなるほど説いていた。
【プロフィール】
下村 彦右衛門正啓(しもむら・ひこえもんしょうけい)1688年生まれ。
十九歳で京都伏見の生家で大文字屋を開業。行商に力を入れて活動する。大阪に進出して呉服店を開業し今日の礎を築く。