自分の運命に挑戦し扉を切り開くか
周囲の人の行為や協力でおのずから
開いていってくれるか


 NHK の朝のドラマ「マッサン」の主人公となった竹鶴の語録を紹介しよう。
 「ウイスキーの場合、品質というのはうまさということだ。品質さえよければ味なんてどうでもいいということはありえない。逆に、味さえよければ品質などどうでもいいということもありえない」
 また竹鶴は人生と運命の関係には二つの型があると言っている。「一つは自分の運命に挑戦して生きていくにしても、ほとんど自分の力で、その扉を切り開いていく型と、もう一つは周囲の人の好意や協力でおのずから開いていってくれる型であり、私はどちらかというと後者の方に属していよう」
 「品質第一にしろ、常に本物で勝負しろ。われわれがこの分野で開拓者であることを忘れるな。酒造りは科学だ、いつも科学者精神を持って仕事にあたることが大切だ」と社員たちに言い続けてきた竹鶴は「本物のいい商品をつくれば必ず売れる」と信念を崩そうとしなかった。
 筆者は以前にニッカの管理者研修で、青山にある本社に通った。研修中彼らが話し合う中身は常に〝品質〟であり、〝ホンモノ・イイモノ〟づくりであった。竹鶴の物語から百年近くたってもこの竹鶴の思いは脈々と息づいていた。


【プロフィール】
竹鶴 政孝(たけつる・まさたか)1894年生まれ。
NHKの「マッサン」の主人公となった男。ウイスキーを日本で本格的につくり、日本の洋酒界の歴史に名を残したニッカの創業者。