『やってみなはれ
やらせてみなはれ』
やってみなけりゃわかりまへんで
筆者は産業能率大学の経営管理研究所にコンサルタントとして在籍していた時サントリーの職場開発に数年間通っていた。
各職場の壁には「やってみなはれ、やらせてみなはれ」の言葉が貼り出されていた。部課長達は、若い社員の提案や、やりたいことを自由にやらせた。筆者も新しい提案を持ち込み「成功するか失敗するかは五分五分なんですが・・・」と語ると決まって彼らは「先生やりましょう。成功の確率を限りなく百パーセントに近づけるのが私達管理者の仕事ですから・・・・・・」と、提案に飛びつき他社に先駆けて挑戦し成果をあげた。
「陰徳あれば陽報あり。言に怯にして行うに勇あり。開拓魂や。これが寿屋の創業以来の精神やで。そやなかったら、アメリカにもヨーロッパにもあれへん。英国だけにしかないスコッチタイプのウイスキーをつくろうなんて考えてへん。
やってみなはれ、やらなわからしまへんで。酒ちゅうものはみな生きてま。どんな酒かて置いてみなはれ」
その後の社長となった佐治敬三がビールを出そうと決断し、鳥井に打ち明けた時、鳥井はただ一言、「やってみなはれ、男ならやってみなけりゃわかりまへんで」と言ったそうだ。
【プロフィール】
鳥井 信治郎(とりい・しんじろう)1879年生まれ。
サントリーの前身「寿屋」の創業者。「赤玉ポートワイン」や「ウィスキー山崎」等、洋酒専門の酒屋を目指す。「やってみなはれ」の日本的ベンチャーの草分け的存在。