損して徳とれ
利は源にあり
商いは人気なり
最後の船場商人と言われた〝ワダテツ〟はその商売の神髄を孫娘の婿である和田亮介氏に熱心に語り伝えたという。筆者が主催する日本経営道協会での講演に和田亮介を何度かお招きした。その中から心に残ったものを紹介する。
船場商法の代表的なものに「扇子商法」というものがある。
扇子は暑い時にはいっぱいに開いて使うが、使わない時には小さくたたんでおく。経営もこれと同じで、景気の良い時は広げ、悪い時には縮めるというわけだ。
攻めより退き戦の方が何倍も難しいと船場商法は説いている。常にピントを「長期的管理」や「ノレンを守ること」にあわせて「人を増やさない」「借金しない」「無駄しない」、つまり船場商人は普段は扇子を閉めておくというわけだ。
「船場商法の寸言半句」
一、損して徳とれ
二、利は源にあり
三、始末とはモノを活かしてつかうこと
四、利は努力の結果
五、金は返借に節あり
六、人少なきところ才覚育つ
七、商いは人気なり
【プロフィール】
和田 哲夫(わだ・てつお)1893年生まれ。
日本的商道の原点となっている「船場商法」の最後の商人。孫娘婿・亮介に船場の商法を命を削って語り継ぐ。