国だって税金という金がなければ成り立っていかない
自分に「力」をつけるのも「信用」をつけるのも金なんじゃ


 「タネ銭なしで親の金や人の財布をあてにしているような人間にろくな人間はいない、それで事業がうまくいくわけがない。自分の腕を磨くには、タネ銭を持たなくてはできないものだ」と大谷は説く。大谷のタネ銭哲学の本の中から一部を紹介してみよう。
 「サーカスの綱渡りいうもんは、畜生でも練習すればできることなんじゃ。綱があればそれを渡る練習をすれば向こう側にいける。世間を渡るにはこの綱がないんじゃ。わかるか・・・・・。道なき道を渡るから難しい。それを渡らにゃならん。そこでわしは“タネ銭をつくれ”というんじゃ。タネ銭をつくったものだけが、この世間の“綱渡り”できるんじゃ」
 大谷は人づくりの根本は教育にあると二億四千万円を富山県に寄付して大谷技術短大(現富山県立大学)をつくっている。大谷は金を集めるのも達人であったが、公のために金を有効に使うのも達人であった。


【プロフィール】
大谷 米太郎(おおたに・よねたろう)1881年生まれ。
裸一貫、立志伝中の人である。大谷重工業、ホテルニューオータニ、東京卸売センターなどを創設している。