“判断は天守閣で
日常生活はグランドで“
「小事を省き、大事を思う」
筆者は「経営道フォーラム」設立時に、発起人の依頼に牛尾のところにお伺いしたことがある。経済同友会のリーダー的存在で常に光を放っていた牛尾の発言を紹介しよう。
「視野を広げるには、高いところへ上ることだ。ウシオ電機では、姫路に工場があり、外国からのお客様を案内し天守閣に登る。
瀬戸内海は一望にあり諸国までが望みうる。東西南北にとも窓があいている天守閣は、まさに絶好の社長室である。眺めていると、実に気宇壮大になり『小事を省き、大事を思う』心境にもなれる」
さらに牛尾は語る。
「日本が伝統的にグランドに降り立ち、ともに汗を流すリーダーシップを確立してきた。しかし常にグランドは、リーダーの目線も皆と同じ高さで、ともすれば目先の利害尺度でものを考え、低い目線で意思決定してしまう危険がある」
経営者は、年に一度や二度は天守閣に登り過去から未来への長い時間を眺め、広い視野に立ってこれからの経営を考えてみる必要がある。“判断は天守閣で、日常生活はグラウンドで”と語った牛尾の言葉は今でも筆者の耳に残っている。
【プロフィール】
牛尾 治朗(うしお・じろう)1931年生まれ。
兵庫県生まれ。東大卒。日本青年会議所の会頭や経済同友会の代表を歴任。自社の事業である「光の装置」のような、身体全体から高品質な光を放ち日本の今日を導いてきたカリスマリーダーである。